大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)1916号 判決

そこで次に加藤が控訴人名義の右預金を担保に本件借入れを行うことにつき代理権を有すると鈴木が信じたか否か、及び信じたことについての過失の有無について考えるのに、証人鈴木三四、同秋摩トラの原審及び当審における各証言、証人竹島菊江の原審における証言及びこれにより成立の認められる乙第三号証によれば、鈴木は、上司である瀬戸に始めて加藤に紹介された時預金や貸付の取引の名義人は控訴人であつたので不審に思つたこと、鈴木は竹島菊江の日掛定期積金のため菊江の指示により控訴人方を訪れ菊江の姉である控訴人妻トラから掛金を集金していたこと、鈴木は同年八月中には一〇日、一四日、二三日、二四日及び二八日の合計五回にわたつて、右掛金を集金したこと、鈴木は、本件貸借についての加藤の代理権の有無本件貸付金の使途を容易に事前に控訴人夫婦に確めえたにも拘らず、それをしないで同月二六日本件貸借を行つたこと、鈴木は本件貸借の弁済期である昭和四一年九月二五日経過後も控訴人に直接弁済を求めることなくその後同年一二月下旬に至り加藤は所在不明となつたことが認められる。右事実によれば鈴木は加藤に代理権のないことを知つていたと考えられないではないし、かりに善意としても加藤に代理権ありと軽信した鈴木には過失があると考えるべきであるから、表見代理により控訴人の責任を問うことはできない。

(近藤 田嶋 稲田)

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